中央研究所、岩谷水素技術研究所

11月28日(月)に、岩谷産業株式会社の中央研究所と岩谷水素技術研究所(兵庫県尼崎市)を訪問させていただきました。

■研究所概要

岩谷産業株式会社中央研究所は、同社の事業領域における研究や分析など行うことを目的に、2013年4月に開所しました。2021年10月には、これからの広がりが期待される水素についての研究を進めていくことを目的として、水素に関わる研究部門を分離独立させ、新たに岩谷水素技術研究所を開設しました。現在両研究所では、約60名のスタッフが勤務しており、水素だけではなく、溶接関連、標準ガスと言われる高精度混合ガスの充填、食品の分析など、多岐にわたる研究、開発をされています。


■水素関連

国内唯一の液化水素サプライヤーである同社では、その特色を生かし、液化水素を用いた実験ができる設備を所有しております。水素を液化することにより、体積が小さくなり大量輸送、大量貯蔵が可能になるため、今後の水素キャリアの一つとして普及していくことが期待されております。今後液化水素の貯蔵や運搬、利用を進めていく上で、様々な技術開発要素があり、関連する機器メーカーなどと共同で研究、開発を進めています。液化水素だけではなく、超高圧の水素を使用した試験設備も所有しており最大で、130MPaの圧力での試験を行うことが可能です。燃料電池車への水素充填を行う水素ステーションでは、水素を80MPa以上に圧縮しており、そのような箇所で使用される部材に対しての圧力試験を行っています。

同研究所に併設する形で、水素ステーションも整備されていました。この水素ステーションは、2014年に開設していますが、日本で初めてとなる商用水素ステーションとなります。液化水素を気化し、高圧に圧縮して燃料電池車に充填する、いわゆるオフサイト型のステーションです。同社では、このステーションを皮切りに、現在では全国で60カ所以上の水素ステーションを運営されています。


■ その他(溶接、混合ガスなど)

同社では、産業用のガスの製造と共に、溶接ロボット、溶接機、溶接ワイヤ等の溶接関連製品の販売をされています。こちらでは、溶接ロボット、溶接機を複数台設置し、ユーザーの要望に応じて色々な条件でのテストを行うことができます。溶接機や溶接ワイヤと共に、ガスの混合比率を変えることにより、溶接のスピードアップや溶接精度の向上などの改善が図られるそうです。また、キセノンやネオンといった、希少ガスの小分量充填もされています。このような希少ガスは、そのほとんどが輸入品となり、ユーザーの必要量に適した形態での供給を行うために、管理された区域で精密な小分量充填を行っております。 


この研究所は約10年前に開設されました。その当時は、今ほど水素が盛り上がっている状況では無かったそうです。そのような時期から、将来の水素社会の実現を見据えて、水素についての研究、開発を進めてこられました。昨年10月に開設された岩谷水素技術研究所は、水素という名前がついた日本で初めての研究所とのことです。日本における水素市場をリードしてきた同社が、これまでの知見や経験を活かし、さらに水素に関しての新たな研究、開発を進め、これからの水素社会を築いていくという強い意志を感じることができました。