Hy touch神戸、スマートコミュニティ、すいそふろんてぃあ
10月6日(木)に、川崎重工業様(神戸地区)を訪問させていただきました。
1.液化水素荷役実証ターミナル(神戸空港島)
液化水素荷役実証ターミナルは、神戸ポートアイランド沖の神戸空港島の一角に設置され24時間体制で運用されています。受入設備の中でも、直径19m、容積2500m3の液化水素貯蔵タンクがひと際存在感を示しています。タンクは特殊な球体真空二重殻構造で冷却装置がなくても、水素を液体で長期間保管できるというものです。本技術は、40年前からJAXA種子島宇宙センターの液化水素タンクで培われてきたそうです。また、水素運搬船からの液化水素の荷役に使われるローディングシステムも、タンク同様真空二重殻構造を採用。水素のやり取りは、船からタンクへの圧送はポンプ、タンクから船へは加熱気化ガスにて実施。これまでに20回以上の荷役実証を行い、また将来の大容量化を見据えて、ローディングアームは新たな技術開発(フレキシブルホース→スイベルジョイント)が進められていました。ボイルオフガス排出の際の白雲や球形タンクによるレーダ影響等の課題を克服され、飛行経路と近い立地を実現しています。神戸空港島内という一般の地区で既に液化水素を海外から受け入れる設備が稼働し、実証試験を終えて実用化段階に入っていることを肌で実感することができました。
2.水素CGS活用スマートコミュニティ実証地
水素ガスタービンによるCGS(コジェネレーションシステム)実証設備が神戸ポートアイランドにあり、水素ガスタービンで水素専焼または天然ガスとの混焼による発電と、排熱を利用した実証試験が行われています。発電した電気は、国際展示場、下水処理場、神戸新交通など生活を支える基盤施設で利用されています。電気は、電力会社様の系統線使って自己託送という制度により送電を行っています。また、排熱により蒸気を発生させて、近隣の病院や温水プールの熱源として活用されています。発電技術のコアとなるガスタービンは、これまでにウェット方式の開発・実証が完了し、さらには技術的難易度の高いドライ方式による水素ガスタービンの基盤技術を確立するとともに、発電効率の向上などを実現しました。現在は、ドライ方式でのNOx性能向上や天然ガスとの混焼対応を目的とした改良開発が行われています。これにより、水素・天然ガスの混合燃料に対して幅広い混合率での運転が可能となり、将来的に水素が大量導入されるまでの過渡期においても、柔軟に対応できる水素ガスタービンの普及が見込まれます。BCPに関しては、油燃料で起動できるシステムは備えており、設備的には災害時対応の機能は有しているものの、実際の災害時には電力会社様の系統線が回復するまでは系統接続することはできないので、運用面を考慮した設備のあり方を検討する必要があるとのことです。
3.実証用液化水素運搬船
実証用液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」(以下、実証船)は、川崎重工業神戸工場内の岸壁にその大きく優雅な船体を着岸させていました。間近で見ると、全長116m、幅19mの船体は写真で見るよりはるかに大きく威圧感を感じるほどです。容量1,250m3の液化水素タンクは陸上の貯蔵タンク同様に真空二重殻構造ですが、揺れの激しい外洋航海するため船体への固定箇所を増やす必要があり、これにより熱が入りやすくなることを防ぐため内外殻の間に、陸上タンクで採用の断熱材とは異なる断熱膜を追加することで、より液化水素の温度を低温で維持できる高性能な構造です。実証船は昨年6月の竣工後、国内航路での試験航海を経て、12月からは外洋航海の許可を取得した上で、これまでに2回、日本と豪州を往復して液化水素の運搬で実績を積み上げてきました。実証船は、高断熱なタンクを採用しているため、豪州から日本への航行中ではボイルオフガスはタンク内に封じ込めることが可能(ベントマストで放出しない)ですが、航行中のボイルオフガスを活用できる水素ボイラを搭載した次号機を検討されており、近い将来に、更にスケールアップした液化水素運搬船によって日本と海外を定期的に運搬される日が待ち遠しいと感じました。
川崎重工業様が、日本の水素技術を牽引されている実績を改めて認識することができました。JH2Aとしてもこのような技術をより多くの皆さまに利用いただき水素化の裾野を広げていけるように協力して参ります。
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